1巻「炎の蜃気楼」

結界

初出は1巻初頭。武田信玄が封じられた魔縁塚に施してあったものを高坂、由比子(三条の方憑き)が破壊している。以後ミラージュでは度々登場。
憑依霊は結界の中には入れないらしい。護法童子もこの中は覗けない。

【解説】
密教では、修法によって魔障を入れないために一定の地域を限定すること。
修法道場を結護する道場結界、さらに狭くは、修法壇の四囲のみの壇上結界がある。
結界には白芥子を加持し四方上下に散ずる結界等もあるが、現行の修法次第では、地結・四方結・虚空網・火院・大三昧耶の五種印明と当部の部主明王の印明を結誦して結界する。即ち心地大壇の四隅に金剛不壌の楔を打ち込み、四方に壇をめぐらし、上方に網を張り、墻の外に火焔で囲み、さらにその外に重ねて結界する。


初出1巻P50。怨霊に襲われそうになった成田譲の家に上がり込んできた直江が、毘沙門天の真言を唱えながら結んでいる。
主に景虎達が調伏を行なうときや、神仏を呼び出すときなどに結ぶ。

【解説】
手の指で種々の形をなし、仏・菩薩諸尊の内証を標示するもの。
修行者が本尊と渉入し融合するためにその本尊の印相を結ぶこともある。


調伏

初出1巻P52。上杉夜叉衆に軍神上杉謙信公から授けられた力。霊魂を強制的にあの世に送りつけられる。

【解説】
抑制・制御の意。内的には心身を調和し制御して自らの悪徳や悪業を退け、外的には敵意あるものを強化し、障害をもたらすものを打ち砕くこと。
密教で行なわれる〈調伏法〉は、〈降伏法〉〈折伏法〉ともいい、いくつかある修法体系の一つに数えられる。五大明王などの威力のある尊格を本尊にいただき護摩を焚いて敵や怨霊などを打ち破る修法。


合掌

まだ直江が高耶と出会ったばかりの頃、浄化した霊魂に向かって捧げていた動作。
最近はなんだかやっていないようだ。

【解説】
敬礼作法の一つで、普通は胸前で両手の掌を合わせる。諸仏を礼拝する時や日常の挨拶にも行なう。


のうまくさんまんだ ぼだなん ばいしらまんだや そわか

上杉夜叉衆が光包調伏をするときに唱える毘沙門天の真言。

【解説】
→毘沙門天


毘沙門天

初出はミラージュで直江が初めて調伏するシーンの「南無刀八毘沙門天!」と唱える呪文中。
上杉夜叉衆の守護神。冥界上杉軍の調伏力などは、ここから授かっている。
景虎が行なう結界調伏で、全長10メートルの姿で現れる。

【解説】
毘沙門天は須弥山の四方を守護する四天王の一神、北方を守護する多聞天の別称。もともとインド古代神話では暗黒界の悪霊の長で、後に財宝福徳の神に転じ、仏教に入ると、夜叉、羅刹の統領として須弥山にすむ帝釈天の配下となり、須弥山中腹の四方の門を守る神の一つとなった。(→四天王)仏法とそれに帰依する人を守護する護法神。八大薬叉大将、二十八使者が眷属。日本における四天王信仰は、聖徳太子が物部氏との抗争の折、四天王に戦勝祈願をし、四天王寺を建立することに始まる。それ以来毘沙門天は、戦いの神、鎮護国家の神として信仰され、中世に於いても武神として単独信仰され、上杉謙信、楠木正成等に深く尊崇されていた。また、福徳富貴の神としても単独信仰され、後世、七福神の一つともなる。
【形像】
本来決まった形がなく、インドでは貴人の姿に作られたが、日本では仏法守護の役割を表すために主に武装忿怒形をとるが例外も見られる。一般の形では甲冑を付けて、右手に宝棒、左手に宝搭を持ち、岩座、あるいは二邪鬼(尼藍婆・毘藍婆)の上に立つ。宝棒の代わりに持物として三叉戟、矛、宝剣などを持つものがある。

〈兜跋毘沙門天〉
【解説】

唐代、西域兜跋国(吐蕃・トルファンなど所説ある)が外敵から侵入を受けた際、北方の城門のうえに現れ、敵を威圧して国を守ったと伝えられる毘沙門天で、古来その伝説と共に王城鎮護の神とされた。
【形像】
左手に宝搭、右手に戟を握り、脚下に三夜叉(中央が地天か歓喜天、左は尼藍婆、右は毘藍婆)を踏む。身に金鎖甲と称する外套式の甲冑を着用。
※鞍馬寺の毘沙門天は、平安京の王城鎮護のものだが、形状としてはめずらしく、毘沙門天の特徴である宝搭を持たず、右手に戟を立て、左手を頭前にかざして遠方(平安京)を眺める姿をしている。

〈刀八毘沙門天〉
ミラージュで調伏の呪文に出てくる毘沙門天。
【解説】
四面十臂で獅子に乗り、左右の各4手に刀を持つ像。眷属に毘沙門五太子がいる。(上杉夜叉衆が5人なのは、このあたりからだろうか?)だが、この刀八毘沙門天とは、兜跋を誤り伝えて刀八と解したものらしく、経典的根拠はない。
因に映画「天と地と」で上杉謙信が崇拝していたのはこの毘沙門天像である。

真言
のうまくさんまんだ ぼだなんばいしらまんだや そわか
【訳】
普く諸仏に帰依いたします。毘沙門天に帰命したてまつる。スヴァーハー

種字
ばいばい


虚心合掌。
小指を拳の中に入れ相交え、親指は並べ立てる。
人差し指を中指の背に屈して、少し着かないようにする。


護符

武田信玄に憑依された成田譲に、直江が渡した腕釧。

【解説】
仏・菩薩・明王・諸天・鬼神などの影像や真言・陀羅尼・種子などを書くか印刷して加持祈祷した符。
材料には紙片・布帛・木片のほか、尊像着用の法衣や袈裟の一部、また加持土砂も用いられる。


楞厳咒

成田譲に憑依した武田信玄を封じ込めるための腕釧の裏に刻まれた真言。
武田信玄は以前、八句陀羅尼によって魔縁塚に封じ込められたためこの真言には弱いらしい。

【解説】
八世紀の初め、入唐の梵僧、般刺密那帝(はらみなてい)の訳した、「大仏頂如来密因修証了義諸菩薩万行首楞厳経」第七巻の長いダラニ。如来の仏頂より出る智慧の光によって、魔障を調伏する。


陀羅尼(真言)

ミラージュで色々な場面で唱えられている。

【解説】
散乱する五感を制御して精神を統一した状態をいい、またそのために用いる文字真言のこと。真言は、サンスクリット語のマントラの訳語で、陀羅尼はその音写語である。密教における諸尊の咒句、咒すなわち一般的に「秘密のことば」を真言という。比較的短いものを真言、比較的長いものを陀羅尼という。


阿梨 那梨 ト那梨 阿那盧 那履 拘那履

上杉夜叉衆が裂炸調伏をするときに唱える毘沙門天の真言。

【解説】
毘沙門天護教呪。法華経に書かれている陀羅尼で、この陀羅尼を唱える人を悩ますものから百由旬(一由旬は牛車の一日行程で14.4メートル)の範囲を守護する。

【訳】富める者よ 踊る者よ 讃歌によって踊る者よ 歌神よ醜悪なる神よ 


オン アナレイ…

 八句陀羅尼。直江がこの陀羅尼を唱えると、成田譲に憑依していた武田信玄が怯んだ。

【解説】
楞厳咒の第五会の終わりに説かれる陀羅尼。楞厳咒の神髄にあたる。
楞厳咒は如来の仏頂よりいずる知慧の光によって、魔障を調伏するという長い陀羅尼である。
楞厳咒の全文と訳は後のページ。

【訳】火焔尊に帰命奉る。輝き給え。強力な金剛尊よ。結界せよ。結界尊よ。金剛手尊よ。破敗せよ。フーントルーン。破敗せよ。めでたし。


夜叉

初出は1巻p235。高耶が行なった結界調伏の呪文。「…我ら六道の夜叉なり」

【解説】
もとインドの神話では人を害する鬼類であった。後に仏教で八部衆に加えられて、仏法守護に任ずる。毘沙門天に属し衆生を守るもの。それを統領するものを夜叉大将という。


おん ばざら ぼきしゃ ぼく

高耶がはじめて毘沙門刀を出現させたあと、それを解除するために直江が唱えた発遣の真言。
真言を唱えると毘沙門刀はかき消すように手の中から消えた。

【解説】
發遣の真言。發遣とは、召喚した本尊を奉送すること。
この真言は行法の終わりに結界を解くための撥遣の真言で、道場降臨諸尊の還御や諸餓鬼の退散を求めるときや仏像仏壇墓の抜魂の時に用いる。
このことから、毘沙門天を毘沙門刀として召喚した後に、直江が唱えていることが多い。

【訳】 金剛に帰命致します、解脱、本土に帰還し給え。

【印】
金剛外縛にして二つ中指を立てて蓮葉の様にし、花をはさんで空に投げる。 發遣





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