5.5巻「最愛のあなたへ」

金剛合掌

初出5.5巻p15。鎮霊法中高耶がとった動作。

【解説】
両掌をあわせて十指の頭が、右が左の上になるように交叉させる。


羯締羯締 波羅羯締 波羅僧羯締 菩提娑婆訶 般若心経

初出5.5巻p16。高耶と直江が魚津城で鎮霊法を行なった際、直江が唱えた陀羅尼。

【訳】ゆけるものよ、ゆけるものよ、彼岸にゆけるものよ、彼岸にまったくゆけるものよ、悟りよ、弥栄
【解説】
日本では浄土教以外の各宗派で読誦され、最も普及する般若心経の一文。
般若心経とは膨大な般若経の内容を圧縮し、般若皆空の精神を表した簡素な教典である。主に鎮魂のために唱えられるので、魚津城の鎮霊法で直江達が唱えたのであろう。


阿弥陀仏

5.5巻p85。下間ブラザーズ率いる一向宗が信仰する仏。この仏の加護によって調伏力が阻まれることがある。
直江や綾子が懲縛鞭を使う時に唱える阿弥陀真言の主尊。(7巻)(12巻)

【解説】
梵語のアミターバ・アミターユスの音写。無量寿、無量光如来と意訳。梵語のアミターバとは、量ることが出来ない(無量・無限)という意味で、量り知れないほどたくさんの光、量り知れないほどの寿命を意味する。「阿弥陀経」によれば、この如来の光明は無量であり、十方の国を照らして障るものがなく、またこの如来の寿命及びその仏国土の人々の寿命も無量無辺であることから、この名が付けられたとある。どちらかというと、密教の仏としてより、浄土宗、浄土真宗の本尊として知られる。もとはインドの王族の太子だったが、出家し、後に法蔵菩薩となった。その時48の願をおこし、その大願を成就して仏となり、西方浄土の教主になったという。その大願の中で最も有名なのが第18願の念仏往生。「南無阿弥陀仏」と唱えるだけで、誰もが必ず極楽浄土に往生し、成仏できるというもので、これを信仰したのが浄土教である。
【形像】

如来部の形像に(如来部の特徴は、頭部の肉髻・螺髪と、身体に納衣以外のものを付けていない)九品印を結ぶ。九品印とは、阿弥陀が示す9つの印のことで、阿弥陀は往生した人を極楽浄土に救い上げてくれるが、その浄土には9つの種類があり、(その人の生前の所行によってどこに迎え入れられるか決まっている)それを示した印である。だが、この九品印の像が造られたのは、藤原時代以降で、それより依然は、是定印・施無印・与願印・転法輪印の4種類で造られている。 

真言
オン アミリタゼイ カラ ウン
【訳】不滅の威光において働く仏に帰命す。
※「南無阿弥陀仏」
下間達が率いる一向衆が唱えるこの呪文は真言ではない。
阿弥陀の四十八願の内のひとつで念仏往生願という。念仏を唱えるものは必ず往生させると言う阿弥陀の誓いから、末法思想が大流行した平安時代、阿弥陀如来信仰が流行し、その時から始まった「念仏」である。「南無阿弥陀仏」と唱えることによって、死後は阿弥陀如来に導かれ、極楽浄土に生まれ変わる事ができるとされる。

種字
きりーく



6巻「覇者の魔鏡・前編」

直綴

6巻p86。橘家を訪ねた麻衣子の前に直江が現れたときの服装。

【解説】
中国で改変した法衣で、一般に僧尼が着用するもの。三衣の下に着用する左肩と、胸を覆う僧祇支と、右肩を覆う覆肩衣を縫い合わせた褊袗に、ひだのある下履きの裾の上下を合わせたもの。


五条袈裟

6巻p86。橘家を訪ねた麻衣子の前に直江が現れたときの服装。直綴の上に身に付けていた。

【解説】
僧侶の衣服。左肩から右脇腹にかけて衣を覆う長方形の布。
三衣のひとつをわが国で考案した様式で、紐鉤の代わりに大小の幅狭い平紐を付けて左肩に付ける。



7巻「覇者の魔鏡・中編」

箱根権現

7巻p23。つつが鏡に封じ込められた高耶の肉体の生命維持装置。
北条の守り神、箱根神社の別名。
8巻p37で、北条が「火合の法」を行なえないように高耶達が用いた「火封じ」の会話に出てくる尊名。

【解説】
箱根三所権現。法体が文殊、俗体を弥勒、女体を観世音とする権現。
万巻上人の夢告によって三神を一所に祭る。明治の神仏分離により、祭神として、瓊々杵尊・彦火々見尊・木花咲耶姫の3神に改められた。
権現は蔵王権現を参照。


金剛鈴

7巻p60。さらわれた成田譲を捜すために、千秋が行なった振鈴法で使用した密教法具。

【解説】
修法に諸尊を驚覚し歓喜するために鳴らす楽器。
形は筒型の鈴部と、上部に把手があり、その部分は金剛杵の形になっている。金剛杵の形により、独鈷鈴・三鈷鈴・五鈷鈴・宝珠鈴・塔鈴などがある。


数珠

7巻p146。芦ノ湖の湖畔で直江が引き千切った。

【解説】
仏・菩薩を礼拝するときに手にかける小さい珠をつないだ輪。
珠の数は通常108個で、108は煩悩を退散・消滅させるためといわれる。108の半分の54で菩薩の五十四位、さらにその半分の27で二十七聖賢を表す場合もある。


雷神

7巻p158。千秋が北条の屋敷に忍び込む際、結界を破るために使用した木端神に呼んであった神仏。使うと衝撃で木端神が壊れてしまうのでパワーは一回しか放出できないらしい。不気味に眼を輝かして、口から強烈な稲妻を吐く。

【解説】
わが国固有信仰で帝釈天が〈鳴神〉として畏敬され、疫神と混合して天神となった。風神と一対で扱われることが多く、浅草寺はこの2神を守護神とした雷門が造られている。
真言
ナウマク ソンマンダ ボダナン インドラヤ ソワカ
【訳】普く諸仏に帰命致します。帝釈天に帰命致します。スーヴァーハー
※帝釈天の眷属なので、この真言を使うらしい。

種字
いー


帝釈天

7巻p158。千秋が使用した木端神に呼んであった雷神は、この神仏の眷族である。

【解説】
梵語のシャクラデバーナームインドラの意訳。インドラは天主・帝という意味で、それにシャクラデバーナームを釈と音写して帝釈天となる。インド神話では、須弥山山頂の刀利天善見城に住み、四天王を領する天主で、身に千眼を印して象に乗る姿。ヴェーダ時代には、雨の神、大地を潤す豊穣神として尊崇されていた。仏教に入ると、梵天と供に釈尊のそばにあってその修業を助ける守護神となった。また、阿修羅との戦いの説話は仏典にもとりいれられている。 
【形像】
密教流入依然は、穏やかな像様の直立像で、梵天と供に釈尊に侍していたが、密教流入後は、三本の牙を持つ白象に乗り、金剛杵を持つ姿をとるのが普通となった。
真言
ナウマク ソンマンダ ボダナン インドラヤ ソワカ
【訳】普く諸仏に帰命致します。帝釈天に帰命致します。スーヴァーハー

種字
いー


輪宝

初出7巻p158。捕えられた譲を助け出すため千秋が結界を破る際もちいた密教用具。

【解説】
元来は天輪王の武器で平板円形、周辺に利刃がある。投げ飛ばして敵を倒す。百戦百勝の天輪王の七宝として王軍に前行し敵を破る性能を仏教に転用して、仏陀の教説・法の象徴として崇拝するようになり、後に紋章化した。


オン アサンマギニ ウン ハッタ

初出7巻p158。捕えられた譲を助け出すため千秋が結界を破る際、輪宝に聖油をかけて火を付ける時に唱えた真言。

【訳】オーム、無等比(比較を絶した智慧)の火よ、フーン、プハット。
【解説】
金剛炎の真言。修行の際の結界法のひとつで、魔除けの炎。


手を開き、左の拳をもって右の背をかばうように着け、親指の面を合わせて三角のように立てる。三角は火を、八本の指は火焔をしめす。


オン トロトロ ウン

初出7巻p158。千秋が、輪宝を結界に向けて投げるときに唱えた真言。

【訳】オーム、お迎えに参ります、荘厳の車を以て。
【解説】
宝車輅の真言。修行の際、本尊を迎えるために宝車を送る真言。


手を開き、左の拳をもって右の背をかばうように着け、親指の面を合わせて三角のように立てる。三角は火を、八本の指は火焔をしめす。


ナウマク サンマンダ ボダナン インドラヤ ソワカ

初出7巻p159。千秋が木端神から雷神を呼びだすときに唱えた真言。

【訳】普く諸仏に帰命致します。帝釈天に帰命致します。スーヴァーハー
【解説】
雷神の真言→雷神


ナウボウ・アラタンナウ・トラヤヤ・ナウマク・アリヤ・バロキティ・ジンバラヤ・ボウジサトバヤ・マカサトバヤ・マカキャロニキャヤ・タニャタ
オン・マイタレイ・マイタレイ・マイタラ・マナウセン・マイタラ・サンバンベイ・マイタロ・ドバンベイ・マカサンマヤ・ソワカ

初出7巻p162。蘭丸が六道界の驚異、ブラック成田の力を引き出すために用いた真言。

【訳】仏法僧の三宝に稽首合掌し奉る。聖観自在菩薩摩訶薩大悲尊に稽首合掌し奉る。当尊の咒を申さん。帰命し奉る。慈愛に、慈愛に、慈愛より生ずる尊に、慈愛によって発生せられた大三味耶に、愛でたし。
【解説】
弥勒菩薩の根本陀羅尼。
根本陀羅尼とは、本尊の内証・本誓功徳等を最も詳しく解くもの。


剣印

初出7巻p208。直江が霊石から怨霊を解縛するときに結んだ印。

【解説】
左手の人差し指と中指を伸ばし、親指をもって薬指、小指の甲を押して刀の鞘とし、右手もまたこのようにして刀とし、鞘の手を左の股のうえに仰げ、刀の手を覆わせてこれを納める。





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