15巻「火輪の王国[前編]」

南無妙法蓮華経

初出15巻p240。加藤清正が生み出した片鎌槍の柄に刻まれていて、金色に光り輝く。

【解説】
日蓮宗の三大秘法の一つ。〈本門の題目〉の事。〈南無〉はサンスクリット語のnamasの音写。帰依、信従、敬礼の意で、妙法蓮華経に帰依信従すること。日蓮宗では、妙法蓮華経の五字や、南無妙法蓮華経の七字を〈題目〉といい、これを唱えることが、成仏の唯一の法とする。この題目は、単なる経の題号ではなく釈尊の説いた法華経の功徳のすべてが収められているから、これを口に唱え、心に信受すれば、釈尊の持つすべての功徳が譲り受けられると説いて、これを本門の題目といい、本文の本尊、本文の戒壇と共にその教義の中心においた。


日蓮宗

加藤清正が信仰してる宗教

【解説】
日蓮(1222〜1282)の開祖で法華経に依拠するため法華宗と称する。天台教学を受け継いだが、諸法の統一としての妙法と共に、諸仏の統一としての本仏の存在を強調し、更に末法の世における本仏・妙法を元にしての積極的な実践を鼓吹し、特に個人救済だけでなく、社会・国家の全体的救済を主張した。宗旨には本門の本尊、本門の題目、本門の戒壇の三大秘法があげられるが、現実における仏国土建設が最後の理想であった。


木剣

初出15巻p271。一向宗に襲われた清正がポケットから取り出し、うち鳴らして観音を撃退した。

【解説】
日蓮宗の祈祷修法で使われる剣形の法具。
雲切り木剣や楊枝木剣など様々ある。祈祷肝文の読誦に合わせて、木剣の上に数珠を重ね合わせて持ち、双方を打ち付けて妙音を響かせる。



16巻火輪の王国[中編]

(キャ・カ・ラ・バ・ア)

16巻p210。開崎が行方不明の高耶を探すために行なった水鏡法で、板人型に書かれた梵字。

【解説】
五輪の種字。密教では、この宇宙は空・風・火・水・地の五要素で構成されていると考え、この五要素を〈五智輪〉〈五輪〉と呼ぶ。五輪は種字、それに色・形を伴う。種字は形としては、団形・半月形・三角形・円形・方形。色では黄・白・赤・黒・青。また、行者の身体の部位の頂・面・胸・臍・膝の五所にも対応する。


水天

16巻p210。開崎が行方不明の高耶を捜すために行なった、水鏡法の主尊。

【解説】
婆楼那と音写し、縛ル拏竜王とも称す。ヴェーダ神話時代、天地を保持する神で、神人両世界を知る諸神の王・神人の王とされ、あるいは司法神として夜を司る神として崇拝されていた。初めは天界に住んでいたが、後には大洋の神・水の神・河の神となり、水界を司る龍族の王にされる。密教においては、万物を潤し育成させる慈愛に満ちた水の徳をもって、八方天・十二天の一つに数えられ、西方の護方天とされる。
【形像】
五龍冠をいただいて亀に乗り、海中に坐して左手に龍索、右手に剣を持つなど。

真言
ナウマク・サンマンダ・ボダナン・バルナヤ・ソワカ
【訳】
帰命、普き諸仏に、水を司る主領に、スヴァーハー。
種字


水天。二手内縛して二頭指を立て合わせ円索のようにする。


鬼字

16巻p229。加藤清正が輝炎石に木剣で描いた呪符。

【解説】
日蓮宗の守護符に用いられる咒。様々ある。



17巻「火輪の王国[後編]」

オン・アギャナウェイ・ソワカ

17巻p20。高坂と直江・八海の交戦中、八海が唱えた真言。これにより鉄円錐が炎の塊と化した。

【解説】
火天の真言→火天


火天

17巻p20。高坂と直江・八海の交戦中、八海が唱えた真言の主尊。

【解説】
梵名アグニ。十二天の一つで、火仙、火神、火光尊ともいわれる古代インドの火神アグニは、かまどの火、稲妻、太陽など多用な形態を取る火を擬人化したもので、ヴェータの祭式宗教では、特に重んじられた。仏教に取り入れられると、火天は内心の煩悩を焼きつくし、精神上の熱苦を消去する如来の智慧を示し、仏法守護の神になった。
【形像】
仏教経軌に説く火天は、いずれも老仙人の姿を取るが、四臂像と二臂像の区別がある。『金剛頂瑜伽護摩儀軌』には、「東南方の火天は、青羊に乗り、赤肉色にして偏身に火焔あり、右二手は、一つは青竹を持し、一つは軍持(瓶)を持し、左二手は、一つは掌を掲げ、一つは念珠を持す。二天女ありて天花を持す。左右に苦行山を置く、左脚を垂れて右脚を蹉す」と言い、四臂で青羊に乗る火天の姿を説いている。現図胎蔵界曼茶羅最外院の東南隅に配された火天は、四臂ではあるが、長髪で髭を蓄えた裸形の仙人姿で、鹿皮の下裳を着け、足を交差させて毛織りの敷物に座り、左手に水瓶と棍棒、右手に三角印と念珠を持つ。火天は単独で画像に描かれることはなく、十天形像、あるいは十二天画像の一つとして、両界曼茶羅、別尊曼茶羅の外院諸天の一つとして描かれる。

真言
オン・アギャナウェイ・ソワカ
【訳】
帰命す、火天のために。めでたし。
(火天咒)
ナウマクサンマンダボダナン・アギャナウェイ・ソワカ
【訳】
く諸仏に帰命す。特に火天に帰命したてまつる。めでたし。

金剛炎・金剛網の法

17巻p163。綾子が熊本の結界保持の為に行なった法。

【解説】
十八道契印の一つ。結護法。道場を聖域として固定するために、修業の障害となるものが侵入しないよう仏の金剛無比な見えない網によって道場を包み込み防御し、諸魔を除くため、結界の外に邪を焼きつくす聖なる炎を出現させる。

真言
金剛網
オン・ビソホラダ・ラキシャ・バザラ・ハンジャラ・ウン・ハッタ
【訳】オーン。拡げ張ることにより養護せよ。金剛網よ。フーン・パット。

金剛炎
オン・アサンマギニ・ウン・ハッタ
【訳】オーン。無等比の火よ、フーン・パット。


十八道

【解説】
印相の基本形で、行者の観法に用いる合掌形を主とする十八契印。それらを行じて本尊を供養する修法を十八道法、略して十八道という。



18巻「火輪の王国[烈風編]」

金剛界曼茶羅

18巻p66。高耶が行なった冥界上杉軍発動法で、空中に種字で描かれたマンダラ。

【解説】
如来の堅固な智慧と、人々の菩提心の姿を、仏部、宝部、蓮華部、羯摩部の5部により表す。仏達が白円光の月輪を背負っているので、月輪曼茶羅とも呼ばれ、また、四角い枠が9つあるので九会曼茶羅とも言う。大日如来、菩薩、明王群などが、全部で1461尊描かれている。
→曼茶羅


六甲秘祝の咒

18巻p66。高耶が行なった冥界上杉軍発動法のひとつ。

【解説】
密教の僧や修験道の山伏が、山に入るときやわが身を守るために唱える(臨兵闘者皆陣列在前)9字で、唱えながら指で空中に横・縦の順に交互に線を引くのを「九字をきる」という。また四縦五横の符字、六甲秘呪ともいう。中国の道家から密教に入った。


九字

18巻p66。高耶が行なった冥界上杉軍発動法のひとつ。

【解説】
六甲秘呪



19巻「火輪の王国[烈濤編]」

五輪塔

19巻p74。大火輪法で場固めのために古坊中に建てられた。

【解説】
地・水・火・風・空の五大を宇宙の生成要素と説く仏教思想に基づいて平安時代に創始されたもの。五輪のそれぞれを表す形で構成され、種字が刻まれている。


無垢浄光陀羅尼

19巻p150。大火輪法で唱えられる陀羅尼

【解説】
『無垢浄光大陀羅尼経』に書かれている、根本陀羅尼、相輪陀羅尼、自心印陀羅尼、六度陀羅尼など、六種の陀羅尼の総称。


五体投地

19巻p150。大火輪法で行なわれる動作。

【解説】
五体とは全身のこと。全身をその前に投げ伏して、仏や高僧、師匠などを礼拝する、インドにおいてもっとも丁重な礼拝の仕方。現実には仏像や仏塔、僧侶に対して額と両肘、両膝を地に着けて礼拝する。


宝勝如来

19巻p151。大火輪法で軸となる修法の仏。

【解説】
施餓鬼法の五如来の一にして宝生仏と同體。梵語の鉢羅歩多は多の義・生。また管理・支配等の意味もあるので勝と譯す。
金剛界五仏の一つで南方解脱輪の主。万法能生の徳を司り、如意宝珠で象徴するように諸願に応じて福徳を満たす意から、菩提心からの功徳を衆生に施すために施願の相である。
【形像】
黄金色で左を拳にして臍の前で仰向け、右手は五指を伸ばして仰向けて横に出す姿で現す。
真言
ナウボバギャバテイ ハラボタ アラタンナウヤ タタギャタヤ
【訳】
世尊宝勝如来に帰命たてまつる。
施餓鬼儀軌
オン・アラタンナウサンバンバ・タラク
【訳】
帰命奉る。宝生尊よ。トラーハ。





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