9巻「みなぎわの反逆者」

曼陀羅

9巻p74。狭間繁治が所持する。中に尼崎城で死んだ者たちの怨霊が閉じ込められている。

【解説】
サンスクリット語の漢語訳で「本質を得る」すなわち悟りの境地に達すること。その本質を、仏教の宇宙観や教理によって諸仏を絵画的に図式に表したものが曼陀羅である。多種あり、曼陀羅の代表とされる、金剛界・胎蔵界曼陀羅(両界曼陀羅)・三味耶曼陀羅・法曼陀羅・羯磨曼陀羅などがある。


胎蔵界曼陀羅

9巻p175。狭間繁治が所持する遺髪曼茶羅の種類。

【解説】
胎蔵界とは胎児が母胎の中で育まれ成長してゆくがごとく、人が菩提心に目覚め悟りに導かれてゆく姿を展開するという意である。つまりこの曼陀羅は、仏の大慈悲の心がいかに我々人間界に開くかを示している。

曼陀羅の中心は八葉の蓮華をかたどった中台八葉院である。その中央に宇宙の根源である大日如来をすえ、8枚の花びらに四仏・四菩薩を配置し、内なる仏性が悟りとして実を結ぶ過程を象徴している。さらに上下左右に、般若・釈迦・普賢・観音などの諸仏を配置して、人間苦を救い災いを除いて即身成仏するための教理を示す。
中台八葉院の真上は一切如来智印と仏眼、宝珠の遍知院。真下は般若菩薩と明王の持明院。左は観音菩薩の蓮華部院。右は金剛杵などを持つ菩薩の金剛手院。それらを取り囲む6院中、上の2院は釈迦如来と文殊菩薩の院、下は虚空蔵菩薩の院、左に地蔵菩薩の院、右に除蓋菩薩の院がある。虚空蔵院の下には蘇悉地院、最も外側は外金剛部院で曼陀羅の世界を外部の魔障から守る天部が集まる。


種子曼陀羅

9巻p179。遺髪曼茶羅を調伏するために高耶が「力」で空中に描いた。
18巻。冥界上杉軍を発動させる為の鍵。

【解説】
種子でかかれた曼陀羅。


宝幢如来

9巻p178。遺髪曼陀羅を調伏するために、景虎が真言を唱えながら空中に描いた種字マンダラの尊の一つ。

【解説】
菩提心を発する意で、将軍が兵卒を統べるに幢旙を以てすると同じく、菩提樹下で一切智の幢旙で魔軍を破る意。
【形像】
大疏には、体が朝日のように赤白で輝く降魔の色とある。現図では浅葱色、肉髻赤黒色の袈裟を偏袒に着て、右臂をまげて掌を仰げ指頭を右に向ける。左手は衣の角をとって胸にあて、宝蓮華座に坐する。

真言
ナウマク・サンマンダ・ボダナン・ナン・ナク・ソワカ
【訳】あまねき諸仏に礼し奉る。ラン・ラフ、めでたし。


開敷華王如来

9巻p178。遺髪曼陀羅を調伏するために、景虎が真言を唱えながら空中に描いた種字マンダラの尊の一つ。

【解説】
菩提心の種子から修行を長養して功徳の花が完成した意で名付けられた。開敷は満開の意。大日如来の平等性智の徳を司り、修行・福聚を担当する。
【形像】
大疏には身相金色で光明を放ち、汚れない真金の如しとある。金色の仏形で肉髻。赤黒色の袈裟を通肩に着る。右掌は仰げて外を向けて指端を垂れる。左手で袈裟の角を握って臍前に置く。宝蓮華座に座る。

真言
ナウマク・サンマンダ・ボダナン・バン・バク・ソワカ
【訳】あまねく諸仏に礼し奉る。ヴァン・ヴァフ、成就あれ


無量寿如来

9巻p178。遺髪曼陀羅を調伏するために、景虎が真言を唱えながら空中に描いた種字マンダラの尊の一つ。

【解説】
阿弥陀仏のこと →阿弥陀仏

真言
ナウマク・サンマンダ・ボダナン・サン・サク・ソワカ
【訳】あまねき諸仏に帰依し奉る。サン・サク、成就あれかし。


天鼓雷音如来

9巻p178。遺髪曼陀羅を調伏するために、景虎が真言を唱えながら空中に描いた種字マンダラの尊の一つ。

【解説】
サンスクリット語名はディヴィヤダンドゥビ・メガニルゴシア。ディヴィヤは「天上の・聖なる」。ダンドゥビは「太鼓」。ヒンズー教では、クシュリナ神の名前。その他のヒンズー神の名前でもある。メガニルゴシアは「雷鳴する」。「天上の鼓が雷音のように聞こえる如来」という意味。この天上の鼓とは、法音のことで、衆生を驚かす雷音のような威力をもって妙音と変わり、共鳴し、菩提心を起こさせることとなる。

【形像】
金色の仏形で、偏袒右肩の袈裟を着、右掌は伏せて膝に置き、指先が地面に触れる触地印。左手は掌を仰向けて臍の下に置く。

真言
ナウマク・サンマンダ・ボダナン・カン・カク・ソワカ
【訳】あまねき諸仏に帰依し奉る。ハン・ハフ、成就あれかし。


千手観音

初出9巻p111。鞍馬寺で尊天信仰されている本尊のひとつ。
9巻p219で瀕死の高耶を助けるために、まばゆい光を放ちながら現れた。

【解説】
梵語のサハスラブジャを意訳したもので、その名の通り千の手と千の眼を持つ観音。千の手の働きは、千人の苦しみをいっぺんに救う慈悲の顕れ、千の眼は千人の悩みをくまなく探す智慧の顕れであり、その慈悲の手と眼であらゆる衆生を洩らさず救ってくれるという。
【形像】
実際本当に千本の手が造られるのは稀で、普通は42臂である。これは一本の手で25の世界の衆生を救うので、25×40で一000という計算で、そこに本体の2手ということになる。合掌印を結ぶ中央の2手と、施無印を結ぶ一手を除く他の手はすべて持物を持っている。
※唐招提寺に残る天平後期の像は実際千本の手を持つめずらしい像。代表の42臂を出し、その間に杓型の小手を千本植え付けてあり、その姿は本書にあるように、まるで翼を持っているようである。けれどこの像、解体修理した時に組立を間違えて数が合わなくなってしまい、今は手の数が数本欠けているそうである。

真言
オン バサラ タラマ キリク
【訳】
オーム、金剛の如くに不壊なる徳を身に付けられたお方よ、フリーヒ
※フリーヒ(キリク)は阿弥陀如来の種字。密教では、阿弥陀如来と観音は同体と考えられているので観音菩薩の種字でもある。
種字
きりーく


天狗

初出9巻p221。鞍馬山の尊天の眷属。木端神に霊波パターンとメッセージを刻みこんでおくと紹介状になる。(12巻p175)千秋は厳島の天狗と仲がいいらしい。(14巻p181)

【解説】
わが国の俗信。一般的には赤ら顔で鼻の長いのが特徴。(大天狗。嘴型のものは小天狗・烏天狗)鳥翼で飛行自在、服装は修験者に似て大小両刀をさし、羽団扇と棍棒をもち、山中の古木上に住む。





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